毒になる親

◆親と子の関係性:子と親の成長バランス

親と子の関係性は多くの場合一生続くものです。その関係性の中で子どもは成長し、大人になっていきます。2歳ごろには自我が発達し親に反抗し始めます。そして、小学生、中学生、高校生と成長するにつれて、子どもが一人の人間として成長していきます。その成長過程に伴って、親も成長し、子をいつまでも子ども扱いするのではなく、一人の人間として対応しなけらなくなります。このバランスがとても難しく思えます。

◆要約

本書は数千人の患者を診てきたカウンセラーによって著された『毒になる親』という本です。著者は患者の多くが、過去に親との関係性に問題を持っていたことに気づき、そのような人に自分の人生を取り戻してもらうための解決策を提示しています。

内容は二部構成になっており、前半は「毒になる親」とはどのような親なのか、以下の7種類に分類されています。

「神様のような親」「義務を果たさない親」「コントロールばかりする親」「アルコール中毒の親」「残酷な言葉で傷つける親」「暴力を振るう親」「性的な行為をする親」

そして、なぜ親がこのような行動をとってしまうのかについてまとめられています。

後半は「毒になる親」に支配されてきた子供が、人生を取り戻すための解決策を提示しています。これまで押さえ込んできた怒りや悲しみの感情に正面から向き合い、ありのままを飽くまでも冷静に、毒であった親に伝え、理解し合うことが推奨されています。

◆「親にとってはいつまでも子ども」でいいのか?:子の成長に合わせて親も成長すべき

本書では、暴力など肉体的な虐待よりも精神的な虐待に注目しています。精神的な虐待については表面には現れづらく、虐待と躾、保護の境界が曖昧です。そのため、親子ともども毒になる状況を認識できていない可能性があります。

例えば、子どもをコントロールすることについては、行き過ぎるコントロールと躾の範囲は曖昧です。もちろん、親として子どもの安全を守るために子どもの行動を把握すると思います。しかし、善悪の判断はもちろん、金銭的な判断もでき、ましては成人した20歳の子に、5歳の子どもと同様の把握方法でいいのでしょうか?

「今日はどこで誰と何をしていたの?」「このお金は何に使ったの?」「いつの間にこんなもの買ったの?」

これは親が子とともに成長しきれなかった表れだと思います。親としては単純に気になるから聞いている問いかけや、癖になっている問いかけもあるでしょう。しかし、子にとっては自分が信用されていない、自分の判断はどこか間違っているのかもしれない、と思ってしまいます。

そのため、いつまでたっても自分で判断が下せなくなります。そして親としてもいつまでも子が気になってしまいます。よく聞く言葉ですが「いつまでも子どもで手がかかって困る」というのは、親としてもいつまでも子扱いしているのです。世話をしすぎることで相手の判断力を奪っているのです。そして、親子ともどもその状況に気づいていないのでしょう。

では、気づくためにはどうしたらいいのでしょうか?

本書では恐れず面と向かって親と子で対決せよと述べられています。過去の親のあり方から子どもがどのように傷ついたのか、正直に話すのです。それにより、親が傷つくかもしれません。それを承知で理解し合えることを望んで対決します。もしかしたら、理解してもらえないかもしれません。もっと悪い関係になってしまうかもしれません。しかし、それでも子にとっては心が軽くなります。これは子から親への対決だけでなく、親から子へ持ちかけてもいいかもしれません。対決をすることで崩れていた親子の関係のバランスを整います。

◆他者と自分のバランス:自他ともに尊重する

関係性の問題は、親子関係だけでなく、兄弟、恋人、友人などの深い間柄には起こりうる依存の問題だと思います。

心理学で依存には「共依存」と「相互依存」の2種類があると言われています。

共依存とは、他者に必要とされることで自分の存在意義を見出すことを差し、自他の境界が曖昧になっています。一方、相互依存とは互いの違いを理解し、依存も自立も自由にできる状態で相手とは対等な関係です。自他の境界は明確です。

相互の関係性が深まるにつれて、相手との心理的距離のバランスを取らなければなりません。それは親子に限らず、兄弟、恋人、友人なども当てはまります。

近年増加しているいじめの問題やDV問題なども、相互の心理的関係性が深く関わっているのではないかと思います。

よい人間関係を築くために、相互を尊重し、自他の境界線を考えるきっかけに本書を読んでみてはいかがでしょうか。

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