ソクラテスの弁明

◆「よく生きる」とは?

「よく生きる」とはどう生きることでしょうか。

私は今よく生きているかと聞かれるとすぐには答えられません。なぜなら、よいとは何を基準に判断できるのかわからないからです。それではよく生きるための判断基準がわかっていなければ「よく生きる」ことはできないのでしょうか。

◆本の要約

今回紹介する本は、古代ギリシアの哲学者ソクラテスについて書かれた『ソクラテスの弁明・クリトン』です。

本書は二部構成になっています。第一部の『ソクラテスの弁明』では、不敬神の罪に問われたソクラテスが法廷で死刑をも恐れず、自分の正義を主張し、貫き通す場面が描かれています。第二部の『クリトン』では、死刑を翌日に控えたソクラテスに、親友のクリトンが脱獄を説得します。しかし、ソクラテスは「いちばん大事にしなければならないのは生きることではなくて、よく生きることだ」と主張し、自らの正義のために死刑を受け入れました。

◆揺らがない想いを貫く

私は本書を読んで、ソクラテスの下した判断は超越していて、一般の人にはなかなか真似できないことだと思いました。

ソクラテスにとっての正義とは、いかなる理由があっても不正を犯してはならないことです。ソクラテスは自らの正義のために死刑を受け入れるほど信念を貫いていました。

私にそのような判断ができるでしょうか?私にも死を受け入れられるほど絶対譲れない信念というものを持っているのか、考えてみました。

ソクラテスのように生と死を分けるような大それたものではありませんが、周囲の意見にとらわれずに判断を下した経験が一つあります。

私は4月に弊社へ入社しました。それまでは一般企業に3年間勤めており、転職を決心するにあたって、家族や恩師、先輩社員、友人に相談しました。そのとき、ほとんどの人が転職することを思い留まるように言ってくれました。収入の安定、生活の基盤、身分保障など理由は様々でしたが、どれも私のことを思って引き止めてくれました。しかし、私は転職を決心し、弊社へ入社しました。理由は、創設に携わった会社であること、創設したメンバーと一緒に働きたい、デザイン思考をもっと普及させたいと様々でした。しかし、根底にあったのは、私にしかできないことに挑戦したい、というものでした。組織化された一般企業だと入社3年目の私の替えなどたくさんいます。周囲の方からどんな理由を出されても、転職するという決心が変わらなかったのは、私にしかできないことへ挑戦したい、という強い想いがあったからだと思います。まだ入社して1ヶ月も経っていませんが、私にとって転職はよい選択だったと思います。これはソクラテスの言うよく生きるに通じるのではないかと考えます。

◆よく生きるには:自分の大切なものを知る

よく生きることとは何か、日頃の生活の中ではあまり考えることはないと思います。生活の中で自分の大切なものが何かが明確になると自分に一貫性が持て、大衆の判断に流されることなく、自分で決断することができます。

私は自分の大切なものについてまだまだ明確でない部分があるので、これを期に考えてみたいと思います。

皆さんも自分の大切なものとは何か、考えてみてはいかがでしょうか。

◆正義は一つではない

正義は一つではありません。

少し前に『HERO』という検事の仕事をテーマにしたテレビドラマが流行りました。ドラマでは主役の敏腕検事が、被告人が本当に罪を犯した犯人なのかについて調査し、真実を突き止めていきます。私はこのテレビドラマが大好きでした。その中でも特に印象に残っているセリフがあります。

「正義は一つじゃないんです。僕たち検事は悪人を絶対に許さないという正義があります。そして、弁護人には依頼主を守るという正義があります。そして、皆さん。裁判員の皆さんには、僕らの主張をよ〜く聞いてもらって、法と良心に基づいた公平な判決を下すという正義があります。みんな、それぞれの正義を信じて、それぞれの立場から被告人に光を当てることによって真実を浮かび上がらせていく。それが裁判なんです。」

このドラマで言っているように、正義は一つではありません。教師としての正義、母親としての正義、父親としての正義など、人それぞれに何かを判断する上で譲れない何かを持っているはずです。

自分の正義とは何か、日頃の生活の中であまり考えることはないと思います。自分の正義が何かが明確になると自分に一貫性が持て、大衆の判断に流されることなく、自分で決断することができます。

私の正義はまだ不明確なので、これを期に見つけたいと思います。

皆さんも自分の正義とは何か、考えてみてはいかがでしょうか。

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