デザイン思考のポケット・ガイド
-pocket guide of design thinking-

はじめに:ガイドの使い方

 デザインが意味するのは「現状をより良い状態に変えること」です。20世紀におけるデザインは、主に製品のパッケージや広告といった見た目に関わる狭い範囲が対象でした。今や、デザインの対象範囲は急激に拡大しています。目に見えないサービスのデザイン、働く人が集まる組織のデザイン、そして私たちの生活を支える社会のデザインです。誰もが社会をデザインすること――より良くすること――に関わる時代、それが21世紀です。

 社会をより良い状態へ変えるには、問題を解決するアイデアが必要です。アイデアの特徴は、見たり触ったりすることができない点にあります。どんなに優れた発想であっても、形にできなければただの空想です。アイデアは必ず形にしなければなりません。

 このガイドブックでは、アイデアを生み、形にする方法を紹介しています。目的は「誰もが生産的な形で、社会のデザインに関われるようにすること」です。デザイン方法に唯一の答えはありませんが、様々な視点でデザインを実践するきかっけとなるように、アイデアの見つけ方やアイデアの質を高める方法も併せて紹介しています。ガイドブックの主な対象は、卓越性を追求し続けるプロフェッショナル、社会にとって新しい価値を創造する起業家、そして未来をよりよいものに変えようとするあらゆる組織の人たちです。

 有効な利用シーンとしては「問題意識はあるけれど具体的な解決策が見つからない時」「新しい商品やサービスをつくりたい時」「新しい事業やプロジェクトを立ちあげたい時」です。社会のデザイン手法として、この小冊子ではデザイン思考を取り扱っています。デザイン思考の概要を5段階で紹介し、各ステップで必要なことを解説しています。順番に読むだけで、アイデアを形にする手順が理解できるようになっていますが、、パラパラとめくって使えそうな部分だけを利用しても構いません。

 このガイドブックは、読むためでなく使うために作られました。書かれた方法を試しながら、自分なりのうまくいく方法を是非みつけて下さい。ガイドブックが、新たな時代を切り開く、素敵なアイデアを生み出すきっかけになれば嬉しく思います。読者の方が創造したアイデアが周囲へ広がり、社会をより良い状態へ変える原動力となることを願ってやみません。

2012年9月1日

柏野尊徳